健康のために、ランニングやウォーキングなどの有酸素運動を心がけていらっしゃる方は多いのではないでしょうか?
有酸素運動は脂肪をエネルギーとするため、血中LDLコレステロール・中性脂肪・体脂肪などを減少させることができます。
このことから、冠動脈疾患・高血糖・脂質異常・高血圧・動脈硬化の予防改善、さらに様々な生活習慣病や心肺機能の改善、骨粗鬆症にも予防改善効果があるとされています。
さて、この有酸素運動に対して、「無酸素運動」と呼ばれるものがあります。
「えっ!運動中に酸素を吸わないの?」
いえいえ、運動中に呼吸をしているかどうかという意味ではありません。
これは、人が運動する時の筋肉を動かすエネルギーとして、酸素を必要とするか否かを表しています。
通常運動時は、この有酸素運動と無酸素運動が組み合わさっています。
この二つの違いを理解し意識して、健康の維持向上など目的にそった効果的な運動に、自分なりにつなげていきましょう。
1.有酸素運動と無酸素運動の違い
2.エネルギーシステム
(1)ホスファゲン機構(ATP-CP系)
(2)解糖系
(3)酸化機構
3.有酸素運動と筋トレ(無酸素運動)どちらが良いのか?
(1)脂肪燃焼の時間
(2)筋肉量の低下
4.有酸素運動の適切な時間は?
まとめ
有酸素運動と無酸素運動の違いは、名前の通り筋肉を動かす(収縮)する時に酸素を必要とするかしないかです。
2つを表す代表的な運動といえば、
ランニング、ウォーキングなど
ウエイトトレーニングなど
いずれの運動でも我々人間は、筋肉を動かす(運動)エネルギーを産生する(生み出す)際、体内で物質の合成と分解が行われています。
そのエネルギーを産生するシステムを理解することで、有酸素運動・無酸素運動と各種運動との関係も理解が深まると思います。
そのエネルギー(産生)システムは、次の3つに分けられます。
生物を勉強された方なら聞いたことがあるかもしれませんが、一般的には「何のこっちゃ?」でしょう。
では、体内のエネルギーシステムについて、もう少し理解していきましょう。
筋を動かす(収縮)エネルギー源は、ATP(アデノシン三リン酸)となります。
このATPをどのような過程で産生するかがエネルギーシステムで、次の3つに分けられますので、そのポイントをご紹介いたします。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット アデノシン三リン酸 / ATP(あでのしんさんりんさん)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-008.html
今回は、以降に専門的な用語が出てきますので、上記サイト等で検索しながらご理解いただければと思います。
酸素の利用 | 無し |
運動の特徴 | 爆発的な運動 |
持続時間 | 7~8秒ほど |
エネルギー源 | クレアチンリン酸 |
ATP-CP系とは、筋内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADP(アデノシン+2つのリン酸)にリン酸を与えてATPを再合成するという働きを担っています。
しかし、クレアチンリン酸の貯蔵量も限られており、ATP-CP系の持続時間は7.7秒程度でとても短いです。
ATPはごく少量しか筋中に貯蔵されていないため、大きな力を生み出すと筋内のATPは瞬く間に枯渇してしまいます。
そのため、(細胞は60兆個ありますが)細胞内の小器官(ミトコンドリアなど)においては、ATPを産生する機構が備わっています。
酸素の利用 | 無し |
運動の特徴 | 高強度の持続的な運動 |
持続時間 | 30~60秒 |
エネルギー源 | 糖質(グルコース、グリコーゲン) |
筋中に貯蔵されているグリコ―ゲン(筋に貯蔵している糖)は、ピルビン酸に分解されます。
ピルビン酸はミトコンドリアで代謝されますが、急激なグリコーゲンの分解により、エネルギー需要が高まります。
そして、ピルビン酸は一時的に乳酸へと還元され、この時に発生するエネルギーがATPの再合成に用いられています。
酸素の利用 | 有り |
運動の特徴 | 低強度でゆっくり長時間の運動 |
持続時間 | 長時間 |
エネルギー源 | 糖質、脂質、たんぱく質 |
ATP-CP系、解糖系との大きな違いは、代謝の過程で酸素を必要とするということです。
そのため、瞬間的なエネルギー供給には不向きです。
しかし、エネルギーの供給量は大きいため、有酸素系のATP再合成によって長時間の運動が可能となります。
有酸素運動は行った方が良いのか否かは、この問いに関しては目的によるでしょう。
例えば、「フルマラソンを完走したい」「有酸素性のパフォーマンスの向上」などの目的があるお客様であれば、有酸素運動がメインのトレーニングプログラムで構成しなければなりません。
では、ダイエットに有酸素運動と筋トレのどっちを行えばよいかという質問に対しては、賛否があります。
私の意見としては、目的がダイエットであれば運動を継続するというのが必須になります。
そのため、筋トレよりもランニングや散歩などの有酸素運動を方が継続できるのであれば、有酸素運動を選んでも問題はないと思います。
ただし、ダイエットにおいて有酸素運動が効率的とは言えません。
その理由は、脂肪燃焼時間と筋肉量の低下です。
運動中の脂肪燃焼効果は有酸素運動の方が高いです。
しかし、運動後の脂肪燃焼効果は期待できません。
それに対して、筋トレのような無酸素運動は、運動中は筋中に貯蔵されているグリコーゲンを優位的にエネルギーとして利用します。
その後、脂肪燃焼効果が高くなった状態が2日ほど続くと言われています。
こうして考えてみると、有酸素運動の方が明らかに時間が必要で、無酸素運動の方が効率的なことがわかります。
また、無酸素運動の筋トレでは筋肉への負荷がありますが、有酸素運動では筋肉への負荷はほとんど必要としないため、ヒップアップやくびれなどメリハリのある身体を手に入れるには得策とは言えないでしょう。
有酸素運動は、酸化機構のエネルギーシステムが優位的に働きます。
そのためATPを産生する際に、筋中のアミノ酸を利用します。
長時間の運動が続くと、糖新生と言って筋中のアミノ酸を肝臓に運び糖へと変換します。
そのことにより、アミノ酸をエネルギーに変化し筋分解を促進するため、筋肉量の低下につながります。
お客様に「有酸素運動はどのくらいの時間行えば良いですか」と聞かれることがあります。
正直、ダイエットが目的で脂肪燃焼効果を期待するのであれば、長ければ長いほど効果は高いと言えます。
しかし先ほど述べたように、筋肉量の低下にもつながってしまいますので、適切な時間で行うことをお勧めします。
一般的には、その適正時間は20分~60分と言われています。
ところで、誤解しがちな情報として、このようなことを耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「有酸素運動は20分以上行わないと意味がない」
ダイエットのために行うウォーキングやジョギング、エアロバイクなどの有酸素運動は、20分経った頃からようやく脂肪が燃焼し始めるため、20分以下の時間では効果がない。
この情報は誤解を招きがちなのですが、その真意は次の通りです。
身体を動かす際、エネルギー源として使われる脂肪は、血中に流れている脂肪(遊離脂肪酸)です。
そして血中の脂肪は、運動直後から燃焼されています。
そのため、運動を始めて血液中の脂肪が少なくなってくると、体脂肪と呼ばれる皮下脂肪や内臓脂肪が分解されて血中に放出されます。
実はこの体脂肪の分解が、20分くらいから早まると言われていることから上記のような誤解を招く情報となったのだと考えています。
有酸素運動と無酸素運動の特徴、それぞれのメリットとデメリットなどをご説明しましたが、いずれにしても運動することは健康の維持向上に必須です。
ダイエットでは、摂取カロリーより消費カロリーを多くすることのため、食事を制限で目標達成することも可能ですが、活動量(運動)を増やすことが健康面を考えれば一層必要です。
ランニングであれ、ウォーキングであれ、水泳であれ、筋トレであれ・・・運動が続けられそうであれば、有酸素運動・無酸素運動の特徴も意識しながら、とにかく継続的に運動に取り組んで健康的な日常につなげて行きましょう。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット エアロビクス / 有酸素性運動(えあろびくす / ゆうさんそせいうんどう)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-072.html
株式会社ミリオン・フィットネス
代表取締役 林 界斗
NSCA-CPT : NSCA認定パーソナルトレーナー
NASM-PES : 全米スポーツ医学協会認定パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト
カイロプラクティック整体院 トレーナー
運動特化型デイサービス トレーナー
「健康をテーマに運動を通して一人でも多くの方へ幸福を捧げたい」と思い、ミリオン・フィットネスを創業。お客様をはじめトレーナーへの指導、さらにラジオ番組においても運動指導をおこなうなど、アスリートから一般の方、子供から高齢者まで、幅広いお客様のご期待に添うべく活動している。
主な出演:ABCラジオ「全力投球!!妹尾和夫です。サンデー」、FM守口「疋田哲夫の哲ちゃん”哲学”」
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